「木の香りで、味を包む」──折勝商店が見せた“伝統再生の経営改革”

勝手に企業診断

東京の下町に、木の折り箱を作り続けて100年以上の会社がある。1920年創業、社員わずか15人。老舗木箱メーカー、折勝商店だ。

プラスチック容器が主流となった時代に、木箱で勝負を続ける。一見、逆風の中の経営だが、この会社には、どこにもない“香りと温もりの技術”があった。

経営者の決意:在庫の山を片づけるところから始まった再生

時代がプラスチックに流れたことで、折勝商店の売上は長らく低迷した。しかしコロナ禍をきっかけに、高級弁当やギフト需要が増加。売上はV字回復した。

だが喜びも束の間、円安とウッドショックが直撃。木材の仕入価格が高騰し、利益は圧迫され、生産量の増加による現場の疲弊と経営陣との軋轢が表面化した。

社長交代。新社長がまず取り組んだのは、在庫の整理整頓だった。倉庫には誰も触れなくなった古い在庫や仕掛かり品が山積み。「これが会社の澱(おり)になっている」と判断し、思い切って廃棄。スペースを整えるところから立て直しを始めた。

「まずは、信頼を取り戻そう」

社員と名前で呼び合う風土をつくり、取引先との価格交渉にも自ら足を運ぶ。外部出身の社長だからこそ、しがらみに縛られず動けた。これが、老舗再生の第一歩だった。

強み:木箱が持つ“手に伝わる高級感”

折勝商店の折り箱は、単なる容器ではない。使う木材は、殺菌性と吸水性に優れたエゾ松。木の香りが料理を包み、手に取るとしっとりとした高級感が伝わる。

その技術が評価され、取引先には銀座の名店や高級ホテルが並ぶ。東京でも、手作業で木の折り箱を作れる会社は数社しかない。まさに“木箱の職人集団”といえる。

さらに、木の端材を活用してネームプレートや木札、結婚式用ギフトなど、新しい商品開発にも挑戦している。伝統の中に“遊び心”があるのも、この会社の魅力だ。

中小企業診断士としての提案:伝統×IT×体験で価値を高める

ここからは、診断士の視点で見た、折勝商店のさらなる成長戦略である。伝統工芸の強みを「伝える」「仕組みにする」「広げる」三段階で考えたい。

  1. 伝える:木の良さを“見せて伝える” 木の折り箱の魅力は、香り・手触り・質感など、言葉では伝わりにくい。だからこそ、SNSで動画や写真を使い「感覚で伝える発信」を行う。
    • 木目や香りを可視化する製造工程ムービー職人インタビューによる“技の継承”の物語「木箱はサスティナブルで高級感がある」ことをデータと共に発信
    さらに、工場見学イベントを開催し、地域観光や教育(SDGs・木育)と結びつけることで、ファン層を拡大できる。
  2. IT化:技と在庫を“仕組み化”する
    • 作業標準化動画を制作し、若手育成を効率化。木材の在庫管理や発注をデジタル化し、在庫と原価をリアルタイムで見える化。手書き帳票をデータ化し、効率化余地を探す。
    「職人の勘」を“資産”に変えることが、老舗企業の持続可能性を高める。また、需要増に耐えられる生産体制を確立することが重要。そのためにも効率化余地は徹底的にこだわりたい。
  3. 広げる:木の世界観を「商品」と「体験」で拡張 (1) セット販売で単価アップ:折り箱+箸袋+メニュー台紙+木札などをトータルで提案し、飲食店の世界観を丸ごと提供する。 (2) 新たな柱:OEMと刻印サービス:和菓子や高級スイーツブランドへのOEM供給を進め、ブランドロゴ刻印のパーソナライズ木箱サービスを展開。 (3) 海外展開:すでに始めている輸出を「Made in Japanのもてなし文化」として打ち出し、海外高級ギフト市場に挑む。

まとめ:「木の箱に込めたのは、味だけじゃない」

折勝商店の木箱には、料理だけでなく、職人の想いと時代の変化への覚悟が詰まっている。
在庫の山から始まった改革は、やがて信頼と誇りを取り戻した。

モノを包む箱ではなく、“人の心を包む箱”を作る。

100年企業の再生物語は、今日も静かに続いている。

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