北海道・釧路に本社を置く食品加工機械メーカー、株式会社ニッコー。1977年創業、従業員96名。全国的な知名度こそ高くないが、同社の技術は国内外800社に採用され、まさに“現場が選ぶメーカー”として確かな存在感を放っている。
経営者の決意:大手が見ない領域にこそ、価値がある
釧路という地方都市から発信する難しさを、経営者は営業を通じて痛感したという。
「知名度が低い」「遠い」──その悔しさをバネに、あえて大手が手を出さないニッチなテーマで勝負することを決意した。
同社が手がけるのは、鮭の三枚おろし機やホタテの皮むき機、包丁研磨機など、一見地味だが「現場の困りごと」を的確に解決する機械たち。これらはすべて、全国の加工現場で培われた“声”から生まれた製品である。
また、地元釧路での若手人材の確保にも課題意識を持ち、実習受け入れなどを通じて「地域とともに育つ企業」を目指している。
強み:顧客のニーズを“かたち”にする開発力
ニッコーの最大の強みは、現場の声を技術に変える力にある。
食品加工という多様で繊細な領域において、素材特性・衛生・安全・スピードといった条件を同時に満たす設計力は容易ではない。にもかかわらず、同社は顧客の要望を短期間で具現化し、国内外からの高評価を得ている。
その成果は、ものづくり大賞の受賞という形でも証明されている。
診断士としての視点:次の成長を支える3つの提案
- 伝える(価値の可視化):SNSや動画を活用し、「自社機械の精度や耐久性を“数字で”示す」ことが重要。さらに「こういうお困りごとはありませんか?」と、課題喚起型の発信を行うことで、潜在ニーズを掘り起こせる。
- 広げる(不の解消ビジネス): 人手不足が進む食品加工現場に対して、「機械化コンサルティングサービス」を立ち上げる余地がある。単なる機械販売ではなく、工程診断→自動化提案→導入支援までを一貫で提供する“問題解決型ビジネス”への転換がカギとなる。
- IT化(IoT×サブスクモデル): 機械の稼働データをIoT化し、部品交換時期の通知・故障予知・予防保全を自動化。さらに、稼働時間・停止要因・歩留まり・ライン稼働率をダッシュボード化すれば、利用企業にとっての価値は倍増する。
この仕組みをサブスクで提供すれば、安定したストック収益を確保できると同時に、「現場の困りごとを仮説→新製品開発」へとフィードバックできる。
まとめ:地方発“現場志向メーカー”の未来
ニッコーのように、「地方 × ニッチ × 技術」で戦う企業は、日本のものづくりの根幹を支えている。一方で、情報発信やサービス化という新しい武器を得ることで、さらなる飛躍が期待できる。
「現場の声を聞く」だけでなく、「データの声を聞く」企業へ──。その進化こそ、次の“ものづくり大賞”を生む原動力になるだろう。


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