花粉にもメッキをかける──清川メッキ工業の技術革新と、診断士が提案する次の一手

勝手に企業診断

福井県に本社を置く清川メッキ工業。1963年創業、従業員360人。日本を代表するメッキ加工メーカーとして知られるが、その歩みは決して平坦ではなかった。

経営者の決意:危機から生まれた「品質への執念」

創業当初、清川メッキ工業の主力は電子部品などのメッキ加工だった。しかし、わずかな不良でもクレームが入り、取引先による監査でノウハウが流出するリスクを抱えていた。

経営者は決断する。
「品質を極めることこそが、最大の防御だ」
徹底した品質管理体制を整え、信頼を積み重ねていったものの、2000年代のITバブル崩壊で状況は一変。主力の電子部品需要が急減し、売上は半減する。

「取引先が自社でメッキをできるようになれば、我々の仕事はなくなる」──。その危機感から同社は、誰も挑戦したことのないナノメッキという新たな領域へ踏み出した

強み:花粉にまでメッキを施す技術

清川メッキ工業が生み出したのは、ナノレベルでコントロール可能な精密メッキ技術
「花粉にメッキをかける」ことができるという事実は、同社の象徴だ。

他社が「できない」と断る依頼ほど、挑戦する。その精神が、清川メッキを“不可能を可能にする企業”へと押し上げた。

極小部品への均一メッキや、技術の応用範囲は幅広い。

清川メッキの現在:品質で勝負する企業文化

清川メッキ工業は、今なお「品質で勝負する」という創業時のDNAを貫いている。
現場では熟練技術者と若手が共に改良を重ね、工程ごとのデータ化や微細加工の再現性を追求している。
目に見えない世界で、わずかな誤差を極める。それは、数字では測れない“誇りの仕事”だ。

中小企業診断士としての提案:技術を「伝わる形」に変える

ここからは、私が診断士として同社の今後を考えたときの提案である。現状をさらに飛躍させるための可能性を、5つの方向で整理した。

  1. 伝える:技術の見える化とデータ発信 清川メッキの技術は、顧客にとって“見えない”領域にある。SNSや動画で、メッキ後の性能データや顕微鏡画像などを発信することで、「技術の凄さを数字で示す」ブランディングを提案したい。 展示会では加工前後を電子顕微鏡で比較し、来場者が体感できる演出も効果的だ。
  2. 広げる:医療・バイオ機器分野への応用 同社のナノ技術は、医療用金属や生体材料への応用余地が大きい。特に医療・バイオ機器の微細部品は高い精度と耐久性を求められる領域。ナノメッキの特性を新市場で展開することを提案したい。
  3. コラボ:異業種との共同開発 金属素材メーカーや化学系企業との共同開発により、「メッキ×新素材」の高付加価値製品を生み出せる。特にカーボンやチタンなど、従来難しかった素材へのメッキは市場性が高い。
  4. IT化:トレーサビリティの導入 各ロットごとのメッキ膜厚・硬度・粗さなどを自動測定し、その結果をQRコードで紐づけてデータベース化する。顧客が品質をデジタルで確認できる仕組みを整えることで、「安心して任せられる加工メーカー」としての信頼を一層高められる。
  5. 自社製品:「高硬度ナノコートシート」の展開。 加工請負だけでなく、自社ブランドとしてナノコートシートや新素材加工品を展開。受託加工から“自社製品メーカー”への進化を視野に入れたステップだ。

まとめ:危機が磨いた“技術という人格”

清川メッキ工業の歴史は、まさに「危機のたびに強くなる企業」そのものだ。品質にこだわり続けた姿勢は、やがて世界に誇るナノ技術を生み出した。

そして今、その技術をどう伝え、どの市場に届けるかが次の課題である。

技術を極めることは、人を極めること。
花粉にもメッキをかける清川メッキ工業の執念は、日本の製造業が再び輝くヒントを与えてくれる。

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