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🔸中国製大量生産に押された老舗の危機
ビニール傘の世界的なパイオニアとして知られる「ホワイトローズ」。
しかし、中国製の大量生産品が市場を席巻し、売上は半減。借金は年商の倍に膨れ上がり、「いつ辞めるのか?」とまで顧客から言われる始末でした。
悩んでいる余裕はない。そんな状況で、政治家からの選挙用オーダーメイド傘の注文が舞い込みます。この出来事が、ホワイトローズの経営に大きな転機をもたらしました。
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🔸「ニッチ戦略」に活路を見出す
オーダーメイド傘は口コミで広まり、注目を集めます。
そこから社長は気づきました。「小さなパイ(ニッチ市場)こそが生き残りの道」だと。
大量生産では価格競争に勝てない。しかし、唯一無二の価値を求める顧客にとって、ホワイトローズの傘は“高級で特別なもの”として響いたのです。
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🔸強みは「特許技術」と「老舗ブランド」と「コアなファン」の存在
ホワイトローズの代名詞といえるのが、「逆止弁(特許技術)」。
穴から風を逃す仕組みにより、台風の暴風でも壊れにくい構造です。持ち手には高級木材を使用し、環境にも配慮。まさに「長く使える傘」を実現しています。
さらに、創業300年という歴史が後ろ盾となり、コアなファンがしっかりと支えてきました。
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🔸クラウドファンディングという挑戦
注目すべきは、クラウドファンディングでの資金調達の成功です。
目標額の何倍もの支援を獲得できたのは、コアなファンの存在と、「丈夫で環境配慮された高級ビニール傘」という独自の価値提案があったからでしょう。
これは多くの中小企業が抱える「資金不足で新商品開発に踏み出せない」という課題に対し、一つの解決策を示唆してます。
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🔸診断士としての視点
もし私がアドバイスをするなら、次の3点を推したいです。
1. 防災・アウトドア市場への展開
台風にも耐える技術を活かし、防災用グッズやアウトドア用品(テントカバーなど)への応用。
2. 修理サービスでサステナブル訴求
売り切りではなく「修理・リユースできる傘」と位置づけ、長期的なブランド価値を高める。
3. SNS発信でファンコミュニティを強化
製造工程やクラウドファンディングの裏側を公開し、ストーリーを共有することで、既存ファンとの絆を深めつつ新規顧客も取り込む。
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🔸中小企業への学び
ホワイトローズの挑戦から得られる学びは大きいです。
• 価格競争に巻き込まれず、ニッチ市場を徹底的に攻める勇気
• コアファンを大事にすることで、クラウドファンディングのような新たな挑戦が可能になる
• 技術や歴史をただ守るのではなく、新しい文脈で価値を再構築し、それを「ストーリー」で再解釈し、発信すること
・偶然のチャンスも、戦略の種にできる柔軟さを持つこと
・売り切りではなく、修理や防災活用など「継続的な価値」をどう生むかを考えること
「小さなパイにこそ可能性がある」。これは多くの中小企業が参考にできる発想ではないでしょうか


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