🔸伝統産業を襲った逆境
1935年創業の 三義漆器店。
かつては会津漆器メーカーとして栄えましたが、時代の変化とともに漆器の需要は減少。さらに海外製品の流入で日本全体の漆器産業が停滞する中、東日本大震災で被害を受けるなど、厳しい状況に追い込まれました。
幹部からも「先が見えない事業に取り組むのはリスクが高い」と反対される中、それでも経営者は新しい挑戦に踏み出します。
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🔸強みは「一貫生産」と「企画力」
漆器産業では「器づくり」「塗り」「絵付け」「販売」と分業が多いのが一般的ですが、三義漆器店は 一貫生産 が可能。OEMだけでなく、ODM(企画や設計段階から携われる点)が大きな強みです。
さらに、「生分解性プラスチック」を使った 環境配慮型コップ を開発。石油を使わない独自技術は特許も取得しており、伝統工芸と環境技術を掛け合わせたユニークな存在となっています。
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🔸自社ブランドとデザインへのこだわり
同社は自社ブランドを立ち上げ、商品展開にも工夫を凝らしています。
• ネーミングにこだわり、消費者の印象に残る仕掛け
• パッケージの厚さやバリエーションを増やし、選ぶ楽しさを演出
• 会津塗りの職人とコラボし、漆を塗ったコップや彩色デザインを投入(工芸の背景や文化を体験できる要素が加わっている)
単なる「環境商品」ではなく、美しさや体験価値も兼ね備えた商品 として差別化を図っているのです。
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🔸中小企業が学べること
三義漆器店の取り組みから学べるのは、
1. 逆境下こそ新しい挑戦を進める勇気
2. 伝統×新技術の掛け合わせで独自性を生む
3. 「商品」ではなく「体験」として伝える工夫(消費者が購入したときに “文化やストーリーを感じる体験” に昇華される)(特に重要かな)
という3つの視点です。
伝統産業であっても「環境配慮」「デザイン性」という切り口を取り入れれば、新しい市場を切り開けることを示しています。
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🔸診断士としてのアドバイス
• 環境配慮型製品であることをSNSやWebで積極的に発信し、「エビデンス(数値や認証) 」を添えて説得力を高める。
• 会津塗り体験やワークショップを実施し、顧客参加型の取り組みを展開。
• 漆器を「器」だけでなく、高級レストランやホテルの内装デザイン にまで広げ、BtoB市場を開拓。
これからの成長は「伝える工夫」と「コラボ(異業種との連携)」がカギになると考えます。
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三義漆器店の挑戦は、伝統産業が時代に合わせてどう変革できるかを示す好例です。
逆境の中でも「環境配慮」という未来志向のテーマを選び、一貫生産やデザイン力を武器に新市場を切り開いた姿勢は、多くの中小企業にとってヒントになるはずです。


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