印象に残った企業紹介です。アパレル生産の拠点が海外シフトし、国内染色業界は厳しい環境に追い込まれています。
そんな中、岐阜の染色加工メーカー「艶金」は、大量生産・大量廃棄型のビジネスモデルを見直し、環境課題をビジネスに変える挑戦を始めています。
診断士として、伝統を守りながら未来を切り開く、この挑戦から多くの学びを感じました。
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🔸国内染色市場の縮小と経営危機
艶金は1889年創業、135人を抱える老舗染色メーカーです。
しかし、アパレル生産の海外シフトにより国内生産は急減。
株式も「ただ同然」で引き受けるほど、経営は追い詰められていたそうです。
そんな中で生まれたのが、「大量生産・大量廃棄への違和感」。
「このままでは地球にも会社にも未来はない」
この思いが、艶金のビジネスモデル転換の出発点となったそうです。
🔸環境経営へのシフトと技術革新
艶金の強みは、環境負荷を下げる染色技術です。
• 水使用量を削減する染色技術
• 石油由来ではなくバイオマス資源を使用
• 二酸化炭素排出量を減らす工程管理
• エネルギー見える化で「SBT認定」を取得
このように、環境への取り組みを経営戦略の中核に据えており、
結果として「ブランド価値」や「株主からの評価」も向上しているのだと思います。
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🔸「のこり染」から広がるアップサイクルの世界
面白いのは、廃棄物から生まれる「のこり染」ブランドです。
通常は廃棄する染料残渣を再利用し、環境に優しい染色商品としてブランド化しています。
さらに現在は、アップサイクル型ブランドの立ち上げにも挑戦中とのこと。
「環境にやさしい」だけでなく、「ストーリーのある商品」として市場を開拓しています。
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🔸私の診断士としての視点:次の成長戦略
個人的には、艶金の取り組みはさらに広がる可能性を感じます。
• 研究機関とのコラボレーション
CO₂削減や環境負荷の定量データを「エビデンス化」することで、
ブランドの信頼性と訴求力が高まるはずです。
• SNS・Web発信の強化
のこり染やアップサイクル商品の背景や大量生産・大量廃棄からの脱却ストーリーをSNSで発信することで、サステナブル志向の若年層に強く響くと考えます。
• BtoBパートナーシップの拡大
アパレルブランドやホテル業界と組むことで、染色技術を「体験価値」(染色ワークショップ、工場見学)に転換できるのではと感じてます。
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艶金は「環境対応×ストーリー性×技術力」という強力な武器を持っています。
これをどう組み合わせるかが、次の成長ドライバーになると感じます。
艶金の挑戦は、「環境問題を経営課題として本気で捉える」ことが、ブランド力の向上や新しい市場の開拓につながるという好例です。
伝統産業であっても、技術と発想次第で未来を切り拓けることを教えてくれます。
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