“編む”から“提案する”へ — 小高莫大小工業の挑戦

勝手に企業診断

ニットの町工場が「素材を納めるだけの存在」から「暮らしをデザインする企業」へ。
その変化を導いたのは、たった6人の職人と“動く勇気”だった。

経営者の決意:待たない経営への転換

洋服のパーツメーカーとして大手アパレルを支えてきた小高莫大小工業。
経営者は「注文を待つだけでは未来がない」と感じ、自社企画・展示会出展を決意する。

しかし、父の逆鱗に触れ退任を余儀なくされる。それでも「提案できるメーカー」を掲げて再出発。
自ら動くだけでなく、環境を整えることこそが次代の経営と信じた。

強み:リブニットが持つ“伸びしろ”

小高莫大小の核は、デザイン性の高い伸縮自在のリブニット技術。国内ほぼすべての服飾資材商社との取引実績を持つ。
デザイン性と機能性を兼ね備えた縫製力により、展示会でも高く評価されている。

自社商品:日常に“優しさを編む”

ニット草履、ブックカバー、ティッシュカバー。
どれも“触れることで癒される”をテーマにした日用品だ。
ワークショップでは、来場者が編む体験を通じてモノづくりの温度を感じ取ることができる。

診断士としての視点:提案型ニット工房の次の一手

① コラボ戦略

  • デザイナーや画家と組み、アートとしてのニットを企画
  • 家具・照明メーカーと協業し、「縫うアート」を展開(照明カバーやクッションなど)

② ターゲットの明確化

  • 仕事中の癒し系商品(手触りクッション、アームレストなど)
  • 休日のリラックス商品(ルームウェア、柔らかマット)
  • ベビー・ケア商品(“優しさを編む”ブランドライン)

③ 機能性・SDGs展開

  • 吸湿発熱・抗菌加工を施し、医療・ウェルネス領域へ進出
  • 余り糸・廃材を再利用した「サステナブルニット」シリーズ

④ 伝える力のDX化

  • SNSで製造工程や職人の想いを発信
  • 海外ECの活用、インバウンド需要の取り込み
  • ファン参加型コミュニティ「つながる工房」を設立
  • オンラインワークショップで自分のニットを作る体験を提供
  →事前に参加者に糸や道具を送付し、オンライン上で自分の好みの糸やメッセージ、編み方を入力し、オンライン上で自分のオリジナル商品を作成する。(職人の製造する様子や臨場感を共有)

まとめ:編むのは糸ではなく、つながり

小高莫大小工業の挑戦は、「技術」から「共感」へと価値の軸を移した好例だ。
作り手が表に出て感性を共有することで、素材メーカーが“ブランド”へ変わる。
動く勇気と、伝える力。それが町工場の未来を編み直す糸口になっている。

コメント