以下は「テレビ番組で成長企業として紹介されていた取り組みを見て、こう感じた」という個人的(診断士的)な感想です。
1.WHY ― 経営者の決意・ビジョン
1894年創業、高知に根ざした老舗の竹材メーカー・山岸竹材店。かつては海外からの安価な商品に押され、売上は減少。デパートや観光施設への卸売も振るわず、職人展や郷土展への出品でも成果が出ませんでした。追い込まれた経営の中でリストラを断行し、退職者からは辛辣な言葉も浴びました。それでも「自分たちが辞めれば「虎竹」そのものが消えてしまう」という強い使命感から、虎竹を守り抜く決意を固めたのです。
2.WHAT ― 強みと提供価値
山岸竹材店の強みは、世界でも高知でしか取れない「虎竹」と呼ばれる貴重な竹を活かした技術のようです。虎模様のように独特で均一ではない模様は、不具合ではなく個性として唯一無二の美しさを放ちます。さらに、虎竹は柔らかさと耐久性を兼ね備えており、熟練の職人が機械化不可能な手仕事でその価値を引き出しています。こうして「竹虎」ブランドは4000を超える商品群を生み出し、消費者に“本物の竹のある暮らし”を提供しています(提供価値)。
3.WHO ― 誰のために
同社が届けたい相手は、単なる工芸品ファンにとどまりません。日常の中で伝統素材を楽しみたい一般消費者に向けて商品を展開しています。さらに、ブログやSNSを通じて消費者の声を吸収し、それを商品開発へとフィードバック。伝統を守るだけでなく、現代の暮らしに寄り添った竹製品へと進化させています。
4.HOW ― どのように実現しているのか
その取り組みの中心は「伝える力」です。毎朝更新されるブログでは、虎竹の魅力や籠の作り方、竹の編み方など、惜しみなく職人技を公開しています。YouTubeでの動画発信にも力を入れ、国内外の視聴者に技術と想いを届けています。開始から3年間は注文がなくても発信をやめず、竹製の自動車で全国を走り認知度を高めるといったユニークな挑戦も実行。今ではウェブ注文が主力チャネル(ここは不明だが)となり、YouTubeを通じた海外展開にも成功。安売りではなく、商品価値に見合った適正価格で販売を続けています。
5.診断士視点の今後の考察
中小企業診断士として見たとき、山岸竹材店にはさらに伸びる可能性があります。
•データ分析の強化:Webアクセスや購買データの分析により、販売課題の抽出や販促手段の改善が可能。データドリブンなマーケティングで収益機会を広げられます。
•デザインコラボ:現代のライフスタイルに合わせたデザインアレンジを行い、伝統とモダンを融合させることで新市場を開拓できます。
•新チャネル開拓:高級ホテルや外食レストランとの提携により、竹素材の高級感を活かしたBtoB展開が期待できます。
•カスタマイズ戦略:「あなただけの竹製品」として小ロット生産やオーダーメイド対応を強化するには、生産工程の標準化とIT活用がカギになります。
•体験型マーケティング:ワークショップ開催を通じ、顧客に竹の魅力を直接体験してもらうことで、ファンコミュニティを育てられます。
山岸竹材店は“虎竹を守る”という使命を土台に、伝統を未来に橋渡しする可能性を大きく秘めています。
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