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🔹はじめに
「在庫回転率」より「お客様の笑顔」。
数字ではなく、現場の温度で経営を立て直した料理道具専門店・飯田屋。
どんなに小さな会社でも、理念ひとつで“日本一の専門店”になれる。
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🔸経営者の決意:退職届の山からの再出発
飯田屋の社長が家業を継いだのは、「母を助けるため」だった。
しかし、引き継いで早々、社員の半数以上が退職届を提出。
「あなたは自分に指が向いていない」と言われた言葉が胸に刺さった。
さらに、ある日お客様からこう言われた。
「あなた、自分の店の商品を使ったことがないんじゃない?」
この言葉が、社長の意識を根底から変えた。
自社の商品を徹底的に使い、顧客の声を一つひとつ拾い上げる。
売上データではなく、お客様の表情を見て経営するようになった。
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🔸「現場発・顧客ドリブン経営」への転換
飯田屋では、顧客の声(「不」)をすべて「ヒントノート」に記録している。
どんな質問があったのか、どの道具を使って困っていたのか──。
その蓄積が“宝の山”となり、商品提案や開発につながった。
数字ではなく、人。
効率ではなく、感動。
このシフトが、社員のマインドも変えていった。
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🔸絞る勇気:料理道具に特化
一時期は雑貨も扱っていたが、「料理道具専門店」として徹底的に絞った。
結果、「8500アイテムを扱う“世界でも珍しい専門店」に進化。
店員はすべての商品を理解し、プロの料理人並みの知識を持つ。
“浅く広く”から“深く狭く”へ。
その戦略転換が、専門性とファンを育てた。
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🔸社員の意識改革:「そこにいていい」と思える職場へ
社員の大量退職を経験した社長は、経営の根本を「人」に戻した。
毎日の終礼では、成功も失敗も共有。
「そこにいていい」と思える職場づくりを続けた。
この安心感が、挑戦できる文化につながった。
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🔸診断士としてのコメント
飯田屋のような中小企業が成功する理由は、「現場×共感×絞り」にある。
今後の展開としては、さらに次のような方向性が考えられる。
✅ 伝える:
SNSで「料理道具アカデミー(有料オンライン講座)」を開き、ファンと学びを共有。
✅ 体験する:
店内に小さなキッチンスタジオを併設し、商品を実際に体験できるスペースを設ける。
✅ コラボする:
人気料理人や管理栄養士とのコラボで「調理法×道具」の発信を強化。
✅ 広げる:
飲食店や厨房の開業支援コンサルティング。料理道具の視点から“店舗プロデュース”へ。
✅ オーダーメイド:
ファンの声から生まれる限定モデルの開発。SNS投票で新商品を決める仕組みも面白い。
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飯田屋の経営再生は、
「データ経営の対極」にある“人の経営”。
数字を追うより、顧客や社員と向き合う。効率を求めるより、笑顔を増やす。という「逆張りの経営方針」
その積み重ねが結果的に、誰にも真似できないブランドを生んだ。
KPIだけではなく、「人の声」を経営指標にする。
それが、真の専門店経営なのだと感じる。


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