かつての木村石鹸工業は、「言ったもん負け」とまで言われた組織だった。
手続きが多く、責任を回避する文化。管理主義がはびこり、社員の不満が爆発。
「みんなで会社を辞めたい」と直談判されるほど、組織は限界を迎えていた。
しかし、新社長はそこで逃げなかった。
「責任を取るのではなく、果たす」という言葉を掲げ、
ゼロ利益の会社を根底から立て直していく。
社員とともに会社の理念を見つめ直し、
“自分たちは何者なのか”を問い続けた先に、
新たなブランドストーリーが生まれた。
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🔸強み:かま焚き製法に宿る、職人の温もり
木村石鹸の製品は、すべてかま焚き製法という昔ながらの手作り工程から生まれる。
この製法では、職人が一定の温度を保ちながら、火と向き合い続ける。
わずかな温度差が品質に影響するため、熟練の勘と経験が欠かせない。
その結果生まれる石鹸は、肌にやさしく、香り豊かで、どこか懐かしい。
まさに「科学と感性の融合」だ。
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🔸挑戦:絞ることで広がった世界
木村石鹸が選んだ道は、“誰にでも”ではなく、“誰かのために”。
たとえば──
• くせ毛やまとまらない髪向けのシャンプー
• トイレタンク洗浄剤など
一見ニッチな商品ばかりだが、
これらが今では売上の70%を占める主力製品になった。
「絞る」ことが、顧客との深い関係を生み、小さな市場で確実に勝つブランドをつくり上げた。
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🔸伝える:ストーリーを体験に変える
木村石鹸は、自社の工場を開放し、見て・感じて・学べる場を提供している。
職人の手作業や泡立つ瞬間を体験できる工場見学は人気イベントに。
SNSでも、商品の背景にある想いや製造風景を発信しているかは不明だが、
“ただの石鹸”ではなく“人生の一部になるプロダクト”としてブランド価値を高められるはずだ。
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🔸診断士としてのコメント
木村石鹸の再生は、「伝統×科学×共感」の三位一体で成り立っている。
ここから先の展開として注目すべきは以下の4点だ。これらは全て他業種の成功事例からヒントをいただき、アイデアとしてものである。
①ファン育成の仕組み化
SNSコミュニティや限定サブスクサービスで、共感を継続的な関係に転換。
②ニッチ戦略の深化
アトピー対応、ベビーケア、高齢者向けなど、“肌の悩み別”にブランドを拡張。
③ブランドコラボの展開
オーガニックコスメブランドやファッションブランドと組み、
香り・色・世界観を共創する。アートとの融合も面白い。
④科学的エビデンスの活用
「伝統製法×肌科学」という新しい信頼軸を打ち出すことで、海外展開にも道が開ける。
木村石鹸の事例は、「古い会社ほど変われる」ことを証明している。
大切なのは「理念と技術に「熱意と体温」を取り戻すこと」と感じさせてくれた好例である。


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