【事例】「革クリーム老舗の挑戦に学ぶ“不易流行経営”」― 谷口化学工業所の変革ストーリー

成功事例

先日テレビで紹介されていた「谷口化学工業所」さんの取り組みが、とても印象に残りました。

革製品市場が縮小する中で、老舗の革クリーム会社が掲げたのは「不易流行」。

中小企業診断士として番組を見ながら、伝統を守りつつ変化に挑む姿勢に多くの学びを感じました。

今日は、そのストーリーと私の視点を交えてお伝えします。

🔸 社長の決意と、立ちはだかる現実

番組では、新社長の力強い決意が紹介されていました。

「心を動かす製品とサービスをつくりたい」

ただ実際は、決して順風満帆ではなかったそうです。

革製品の需要は減少傾向にあり、社内には「もうこの業界は伸びない」という諦めムード。

新しい営業戦略や商品開発を進めようとしても、社員からは「社長の神輿は担げない」とまで言われたとのことでした。

私はこの場面を見ながら、変革を進める経営者がいかに孤独な戦いをしているかを実感しました。

それでも社長は挑戦をやめず、一歩ずつ進み続けています。

🔸 揺るがない技術力が未来を支える

番組では、谷口化学工業所さんの技術力が詳しく紹介されていました。

補色技術:色あせた革を自然に蘇らせる

品質維持技術:艶としなやかさを長期間保つ

開発力:木材塗料などへの応用展開

代表商品である「ライオン靴クリーム」は、高級志向の顧客から高い評価を得ています。

さらに、「DIY市場向けの木材塗料開発」という新市場にも着手しているとのこと。

診断士として感じたのは、「技術が強い企業こそ市場を選び直すチャンスがある、市場を広げるチャンスがある」ということです。

既存の顧客層(革市場)だけに依存せず、新たな価値を生み出そうとする姿勢が印象的でした。

🔸 IT活用と顧客接点の再構築

谷口化学工業所さんは、アナログなイメージが強い革クリーム業界の中で、IT活用にも積極的です。

売掛台帳の入力をシステム化することで業務効率を改善

ウェブ注文による販路拡大

展示会やイベントでのワークショップによる顧客体験

番組で紹介されていたワークショップでは、参加者が革製品を自分の手で磨き、その効果を体感していました。

私はこの場面を見て、「商品価値を伝えるには体験型マーケティングが効果的だ」と改めて感じました。

🔸 海外展開という新たな挑戦

番組では、谷口化学工業所さんが海外市場にも挑戦していることが紹介されていました。

日本の高品質な技術を世界へ広げようとしているそうです。

高級感・自然な艶・癒しの香りという価値は、日本国内よりも海外で強く響く可能性があると私は感じました。

🔸 診断士として学んだこと

この事例から、診断士としていくつかの学びがありました。

• 技術が強い企業こそ、新市場を開拓する発想が必要(自社の強みやWHATを価値として認めてくれる会社はどんな会社かを考えれば見つけやすいかも)

• 社員の意識と経営者のビジョンのギャップは、対話と共有で縮められる(先代の社長の協力もあったそうです)。やはり、対話(コミュニケーション)は肝ですね。

• BtoC商品の場合、体験イベントとSNS発信が有効

特に、「革の価値を体感してもらうワークショップ(革商品ではなく、革を高級感のある状態で長期間維持するノウハウを発信)」、「革製品の色ツヤ回復サービスの提供」や「SNSでの情報発信」などは可能性を強く感じました。

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